山口蓬春記念館 平成23年度 春季展
軸から額へ -山口蓬春コレクションにみる絵画の形態-
2011年4月2日(土) ~ 6月19日(日)
この展覧会は終了しました。
山口蓬春記念館では、日本画家・山口蓬春(1893-1971)が蒐集した美術品の数々を所蔵していますが、そのなかでも絵画における形態は軸・巻子・屛風・扇子・額など実に様々です。絵画を装飾・保存する表装の技術の成立は定かではありませんが、各々の時代における描かれた内容の変化や用途の拡大に応じて様々に発展してきたことがわかります。
蓬春に関しても最初は軸や屛風などを主体とした制作から、戦後はほぼ一貫して額に絞って制作しています。この形態の変化の背景には日本の急速な近代化が挙げられ、蓬春自身は「明治期に入つて以来、展覧会という新らしい鑑賞の形式が生れて、今迄床の間という限られた場所でのみ掛物の形式で眺められてきた〈日本画〉も、油絵や水彩画と同様、枠張りと称する一時的額表装を施されて、会場に陳列鑑賞されることになつた。(中略)そしてこの方法、つまり展覧会出品の形式としての額装が、今日までなお日本額装の現状として観られるのである。」(山口蓬春「現代日本画と多聞堂」『額装の話』〈岡村辰雄、1955年〉)と述べています。明治以降、「日本画」と「洋画」という新しい概念が生まれると、制作方法や内容などで互いに影響を与え合うようになり、和室の床の間に掛けられていた軸装の日本画が洋室の壁面にあう額装へと移行していきました。
このような時代の変動の中で蓬春は、新しい日本画の創造を模索しますが、戦後から顕著になる額装による頑丈な木製パネルを使った厚塗り表現もその一つの表れと捉えることができます。
本展では、当館所蔵品の中から、蓬春や同時代を生きた近代の作家たちの作品を中心に、彼らが模索し続けた絵画という創作の世界を形態の面から探ってゆきます。