山口蓬春記念館

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初冬企画展 山口蓬春の画室から見る日本画家のまなざし

山口蓬春記念館 令和4年度 初冬企画展

山口蓬春の画室から見る日本画家のまなざし

2022年12月3日(土)~2023年1月29日(日)

山口蓬春(1893-1971)は昭和20年、戦火が広がる東京・祖師谷の地を後にして山形県赤湯に疎開ののち、昭和23年(1948)、現在記念館のある葉山一色の小高い丘に終の棲家を構えました。海をのぞみ、山を背負う家屋での暮らしの中で、蓬春は庭を囲む草木の四季の移ろいに接し、居ながらにして野鳥の囀りが聞こえる環境に一日の大半を過ごし、創造活動に専念しました。

還暦を迎えた昭和28年(1953)、親友で近代数寄屋造りの名匠である吉田五十八(1894-1974)設計による、蓬春念願の新画室が完成します。南北が庭に面した画室で制作する蓬春の視線の先には、一年を通して椿や梅、紅葉といった和物の草木を始め、当時まだ珍しかったミモザアカシアやクリスマスローズのような洋花まで、蓬春夫妻が慈しみ愛でた多種多彩な植物が溢れ、二人の目を楽しませていました。時折、蓬春が窓を広く開け放ち、目の前に広がる穏やかな情景をスケッチする姿も見られました。

そして画室の西には読書家で知られる蓬春のために書庫も新設され、画室から直接通じる扉が設けられました。扉の奥には美術書を中心とした書籍が収められ、稀覯本・大型美術図書の多くは蓬春の蔵書印が捺され、手製の函に入れて丁寧に保管されるなど蓬春の愛着ぶりを見て取ることができます。とりわけ中国宋元画の図録、江戸時代の本草学の和装本、愛らしい小禽の登場する花鳥画譜に心を遊ばせる一方で、蓬春は各時代の自然観に親しみ、古典や伝統を学ぶことで知識と教養、そして研究を深めてゆきました。

蓬春は自著(註)の中で、「新日本画の創造を目指す為には、新しい素材を自己の眼で自然の中から自由に探究することが基盤である」と記しています。また、「新しい感性の働きを発揮するためには、日本画の古典的なものを充分に研究し、新藝術の糧にしなければならない」とも述べています。蓬春の感性は古典と現代との間を自由に行き来し、画室から眺める庭の植物や小鳥たちの生きた姿に、時代の流れを超えても変わらない普遍的な美を見出していたのではないでしょうか。

本展では画室を取り囲む庭の情景を写した蓬春の作品と素描から、画家のまなざしに映った衒いのない自然の姿を探ります。さらに山口蓬春文庫(神奈川県立近代美術館)より当館で初めて公開される『花彙』(江戸時代、18世紀)、『景年花鳥画譜』(明治時代、19世紀)、『宋元名畫集 續』(昭和13年)を展示し、蓬春が理想として追求した自然への美のスタイルを追体験していただきます。 註 山口蓬春『新日本画の技法』昭和26年(1951)、美術出版社

本展の
みどころ
1. 蓬春が愛蔵した美術図書を初公開
山口蓬春文庫は神奈川県立近代美術館と山口蓬春記念館とに分蔵されています。その中から本展覧会では、当館が収蔵し、蓬春が若き日より定期購読していた大正末から昭和期にかけての美術雑誌ベスト10を、県立近代美術館からは花鳥草木を紹介する美術図書をご紹介いたします。 
2. 東京美術学校と小禽・水禽・魚類の模写教材
江戸時代後期の日本では自然科学への関心が芽生え、動植物を描いた博物図譜が数多く作られました。東京美術学校においても、これらの図譜が教材として用いられていました。
蓬春が所持していた小禽・水禽などの参考図と、自らの模写をご覧ください。
3. 昭和30年代以降の花鳥画を徹底分析
古今東西の美術を研究し尽くした蓬春。その感性が現代と共鳴して洗練された花鳥画スタイルを生みだしました。《洩るゝ陽》(昭和36年)、《新冬》(昭和37年)など、蓬春がたどり着いた花鳥画の粋をご覧いただきます。 

主な展示作品

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山口蓬春
《新冬》
昭和37年(1962) 
山口蓬春記念館蔵
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山口蓬春
《洩るゝ陽》
昭和36年(1961) 
山口蓬春記念館蔵
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山口蓬春
《桔梗》
昭和38年(1963) 
山口蓬春記念館蔵
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山口蓬春
《雉》写生
昭和35年(1960)頃
山口蓬春記念館蔵
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山口蓬春
《椿》写生
昭和28年(1953)頃
山口蓬春記念館蔵
 [前期のみ]
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『景年花鳥画譜』
「春ノ部」 今尾景年画
明治24-25年
(1891-92)
神奈川県立近代美術館
山口蓬春文庫蔵
[後期のみ]
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『景年花鳥画譜』
「秋ノ部」 今尾景年画
明治24-25年
(1891-92)
神奈川県立近代美術館
山口蓬春文庫蔵
[前期のみ]
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『花彙』
島田充房、小野蘭山著
明和2 年(1765)
神奈川県立近代美術館
山口蓬春文庫蔵 
[前期のみ]
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『宋元名畫集 續』
昭和13年(1938)
聚樂社
 [後期のみ]
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狩野國松
《鶉鳩図》
室町時代(16世紀前半)
松浦詮氏旧蔵 
山口蓬春記念館蔵
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山口蓬春模
《岩に兎》
原本:雪舟、
室町時代(15世紀) 
山口蓬春記念館蔵 
[後期のみ]
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伝・銭選《海棠画賛》
中国・元時代(13世紀) 
山口蓬春記念館蔵 
[前期のみ]
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山口蓬春模
《草蟲図》
原本:呂敬甫、
中国・明時代(15世紀)
 山口蓬春記念館蔵
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山口蓬春
《画室からの眺め》
昭和30年(1955)頃
 山口蓬春記念館蔵
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昭和28年(1953)に
完成した画室のヴェランダで
スケッチする蓬春
(60歳頃) 
山口蓬春記念館蔵

展覧会のご利用案内

会期:
令和4年12月3日(土)~令和5年1月29日(日)
   前期:12月3日(土)~12月28日(水) 後期:1月5日(木)~1月29日(日)
   【年末年始休館日】 12月29日(木)~1月4日(水)

※会期中に一部展示替えを予定しております。
※展示作品は都合により一部変更することがあります。
※今後のコロナ禍の状況により、展覧会開催状況等が変更となる場合がございますので、詳しくは当館ホームページ等でご確認ください。
開館時間:
午前9時30分~午後3時30分(入館は午後3時まで)
休館日:
毎週月曜日、1月9日(月・祝)は開館、10日(火)は休館。
入館料:
一般 600円 高校生以下は無料
団体割引 100円割引 20名以上の団体で一週間前までに予約した場合
障がい者割引 100円割引 同伴者1名を含む
連携館割引 100円割引 ※連携館 葉山しおさい公園・博物館(大人券のみ)
    神奈川県立近代美術館 葉山(企画展の一般券・学生券のみ)
年間入館券 1,800円 ※当館展覧会を何度でもご覧いただけるお得な年間入館券1,800円
(発行月から翌年の同月末日まで有効)を発売中)
主催:
山口蓬春記念館・公益財団法人 JR東海生涯学習財団
後援:
神奈川県教育委員会、葉山町教育委員会(予定)

展覧会チラシ

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関連イベントのご案内

展示解説

内 容  展示の見どころを学芸員が解説します。
日 時  12月18日(日)、1月8日(日) 13:30~(約20分)
定 員  先着5名程度
集 合  開始時間までに入館手続きをお済ませの上、受付付近にご集合ください。

鎌倉市鏑木清方記念美術館とのコラボ企画 「葉山・鎌倉 近代日本画家の旧居跡めぐり」

期 間  令和5年1月5日(木)~2月26日(日)
日本画家同士、親交があった山口蓬春と鏑木清方。葉山と鎌倉にある記念美術館がお得に楽しめる企画を連携開催します。

※イベント等は中止になる場合があります。最新情報は当館ホームページ・SNS等をご覧いただくか、お電話にてお問合せください。