日本画家山口蓬春は、昭和23年から亡くなる昭和46年までの23年間をこの葉山の地で過ごしました。戦後、新日本画の創造を求めてまい進しつづけた蓬春にとって葉山の豊かな自然は、心の慰めであり、イメージの源泉であったと思われます。
このたび、当館では、葉山町芸術祭の一環として、「地域の芸術文化再発見 山口蓬春展~葉山を愛し、自然を愛した画家~」を開催することとなりました。葉山町所蔵の作品7点を中心として展示を構成することといたします。
蓬春は、身近な自然に目を向け、そこに生きる草花や生き物たちを「花鳥画」という画題のなかで描いていきました。それらは、ある時は、正確な自然観照に基づいた写実性で、ある時は琳派風な装飾性で、またある時は宋元院体画を参考にした造型で、その時、その時の目的にあった描写で描いています。しかし、その根底にあるものは、常に自然に対する暖かい眼差しであるといえるでしょう。
花鳥画の、作品の優劣は、その作家の自然への愛の深さと、観察力の如何とのみが決定すると謂っていい」
『邦画 四月号』(昭和10年4月発行)で蓬春が語っているように、美は、自然のなかにこそあり、その美を発見することができるのは、自然に対する深い愛情に他ならないのです。
今回は、「花鳥画」を取り上げ、蓬春の本画や素描、模写を展示するとともに、蓬春コレクションからも花鳥画の名品を選んで展示することにより、伝統的な画題に敢えて取り組み、日本画の可能性を模索し続けた蓬春の画業を探っていきます。
山口蓬春《首夏の花》
昭和27年(1952)
葉山町蔵 |
山口蓬春《鯉》
昭和14年(1939)
葉山町蔵 |
山口蓬春《洩るゝ陽》
昭和36年(1961)
山口蓬春記念館蔵 |
銭選《瓜虫図》
中国・南宋~元時代(12世紀-14世紀)
山口蓬春記念館蔵 |
山口蓬春《鳴鶴図(文正筆)》
年代不詳
山口蓬春記念館蔵 |
尾形光琳《飛鳧図(ひふず)》
江戸時代(18世紀初)
山口蓬春記念館蔵 |