山口蓬春記念館 平成29年度 秋季企画展
水、その生命の源を描く
―山口蓬春の眼差しと表現―
2017年9月30日(土)~11月26日(日)
この展覧会は終了しました。
北海道・松前に生まれた山口蓬春(1893-1971)の生家は、松前城二の丸跡にありました。その生家から臨む津軽海峡の景色はその後の原風景となったのでしょうか。戦後、葉山に移り住んだ蓬春は、邸宅から眼下に海を見下ろすこの葉山一色の地で数々の名作を創造しながらその生涯を終えました。
「今、住んでいる所が、湘南の海村なので此頃の画材の多くは殆ど現在の環境からとっています。」(山口蓬春「夏の印象」『三彩』第48号、昭和25年〔1950〕)
そう蓬春が語るように、この頃から魚や貝といった海をイメージさせる作品を多く描くようになります。時にアイオン台風を二階の旧画室の窓から身を乗り出すようにして描いた《濤》や海辺の景色を描いた《夏の印象》など、陽光溢れる葉山の海を通じて蓬春は、西洋の近代絵画の技法を取り入れた、これまでにない新しい日本画の表現となる「蓬春モダニズム」と呼ばれる作品を生み出したのです。
海は、生命の源であり、「水」から成る。「水」は、雨となって天から降り注ぎ、湖を創り、滝となって山河を下り、また海へと還ってゆく――。四方を海に囲まれ、水源豊富な日本において、「水」は身近な自然の形態であり、また四季の織り成す風情として日本人の感性を刺激し、蓬春のみならず古来より絵画のモティーフとして取り入れられてきました。戦前より《緑庭》や《鯉》など「水」をモティーフにした作品を数多く描いていた蓬春ですが、何れも自然に対する真摯な眼差しを窺うことができます。
本展では、蓬春の描く「水」の表現に注目し、水をめぐる軌跡を辿りながら戦前、戦後を通じた蓬春の画業の変遷を探ります。
昭和32年(1957) 葉山御用邸裏にて写生をする蓬春(小針代助撮影) |
① 新収蔵作品の公開!
帝展特選となった本作のモデルは京都・修学院離宮および苔寺(西芳寺)。 《緑庭》 昭和2年(1927) 山口蓬春記念館蔵 |
② さまざまな水の表現に注目!
蓬春の写実的な水の表現! 《鯉》昭和14年(1939) 葉山町蔵 [後期のみ] |
アイオン台風によって荒れ狂ったモノクロの海! 《濤》昭和23年(1948) 東京国立近代美術館蔵 |
葉山の海は蓬春芸術の源泉! 《夏の印象》昭和25年(1950) 個人蔵 |
蓬春のこだわり!水平線が見えますか? 《夏》昭和40年(1965) 東京国立近代美術館蔵 |
③ 蓬春が描いた貝類を実際にご覧いただけます!
蓬春旧蔵を含め、葉山しおさい博物館所蔵の《海辺華》で 描かれた貝類を作品とともに展示します 《海辺華》制作年不詳 株式会社ヤマタネ蔵 |