山口蓬春没後50年・記念館開館30周年記念特別展 -第Ⅱ期 発展-
山口蓬春 美の履歴
2021年4月10日(土)~9月26日(日)
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山口蓬春(1893-1971)が77年にわたる生涯を閉じてから今年で50年を迎えます。日本画の世界を一新した蓬春の功績は後進世代に引き継がれ、現代にも息づいています。蓬春作品や蓬春により蒐集された美術品を長年にわたって守り続けた春子夫人(1899-1991)の意向を受け、平成3年(1991)、葉山の旧邸跡に山口蓬春記念館が開館しました。以来、蓬春作品と愛蔵の品々の展示、資料の調査・研究を通じて蓬春の人間像に迫ると同時に、夫妻が愛でた庭園や創造の場となった画室を含む家屋の整備、ならびに収蔵品の修復等により、蓬春の生きた時空間を感じていただける記念館を目指してまいりました。
令和3年10月に30周年を迎える当館では、改めて蓬春の画業を検証し、とりわけその魅力を余すところなく紹介する特別展を開催いたします。
特別展の「第二期 発展」にあたる本展では会期を3つに分け、まず前期は蓬春コレクションより東洋美術の品々をご覧いただく「東洋への愛」、次に中期は普段見ることのできない秘蔵コレクションが葉山にやってくる「蓬春モダニズム―観たまま、感じたまま、知ったまま―」、後期では蓬春の画家としての原点を探る「日本画家・山口蓬春のルーツを探る」とそれぞれのテーマから蓬春の「美の履歴」を辿ります。
遠く伊豆大島をのぞみ、背後に大峰山を背負うここ葉山一色の山口家旧邸にて、現代の日本画につながる道筋を示した数々の名作をどうぞご堪能ください。
すぐれた古美術のコレクターとしても知られる蓬春。中でも東洋美術への深い探究心は、自身の画風の変遷を経ようともますます深まり、情熱の火は終生絶えることはありませんでした。その美の遍歴は大正末年頃から古美術専門店において磁州窯、俑などの古陶磁を求めることに始まっています。新しい日本画の創造をめざし、昭和初期に始めた中国宋元画の学習を発端とし、朝鮮への旅、そして戦中には美術審査員として台湾、さらに中国各地への赴任を経て東洋の美への幅広い知識を持つようになります。彼の地で目にする数々の美術品によって、蓬春の審美眼はますます磨かれていきました。
昭和31年には北京の雪舟等楊逝世四百五十周年記念式典に日本代表として参列、約2か月にわたり北京、大同雲崗石窟などを視察・写生し、その体験は蓬春芸術に精神的な奥行きを与えました。本展では蓬春が蒐集した東洋美術の精華をご覧いただき、その深く清冽な愛を探ります。
会期:5月16日(日)~7月25日(日)
前期:5月16日~6月20日
後期:6月22日~7月25日
休館日:毎週月曜日
東京美術学校西洋画科に進んだ蓬春。二科展に入選するなど順調な一歩を踏み出したものの、指導教官の一言から自らの日本画への可能性を見出し、悩んだ末に日本画への転身を果たします。その絵の魅力は洋画を学ぶ上で培われた確固たるデッサン力と日本画ならではの素材の活かし方、さらに天性のモダンな感覚が相まって発揮されています。
「構想には自然に直面して、自然から受けたその場の感動が画因になって構想を生む場合と、頭の中で一通り纏めた考へによつて、自然の中から一つの構想を探し出す場合もある。」(『美術大講座 日本画科 第4巻 風景画実習』昭和13年)と述べているように、蓬春芸術にみる理知的な思想は、戦後の新しい時代を迎えることで、画面の随所に現れてゆきます。
本展では昭和20年代の新たな一ページとなった「蓬春モダニズム」と形容される作品を中心に、蓬春の美への飽くなき追求の過程を探ります。
《錦秋》 昭和11年(1936) 三井住友銀行蔵 |
《緑陰》 昭和25年(1950) 株式会社歌舞伎座蔵 |
《夏の印象》 昭和25年(1950) 第6回日展 個人蔵 |
《秋果》 昭和35年(1960) 三井住友銀行蔵 |
《望郷》 昭和28年(1953) 第9回日展 個人蔵 |
《青沼新秋》 昭和29年(1954) 第10回日展 個人蔵 |
会期:8月7日(土)~9月26日(日)
前期:8月7日~8月29日
後期:8月31日~9月26日
休館日:毎週月曜日(8月9日、9月20日を除く)、8月10日(火)、9月21日(火)
大正7年、東京美術学校日本画科に転科した山口三郎(のちの蓬春)は、雅号を「蓬春」とし、日本画家としての道を歩み始めました。大正12年に同校を首席で卒業後、指導教授であった松岡映丘を盟主とする新興大和絵会を活躍の舞台とします。東京美術学校が新たな美術教育制度の変革を遂げる中、網羅的に収集された古美術の数々を臨模することでその技術は錬磨されてゆきます。また京都に暮らし、季節の風物を間近に感じる体験も蓬春芸術の糧となりました。
本展では当館が収蔵する、東京美術学校時代から新興大和絵会時代までの作品を一堂に会し、大正末から昭和初期にかけての蓬春の歩みを辿ります。