戦後、新日本画の進展の中軸となり、日展幹部として活躍していた蓬春は、一流の芸能人たちから美術面での支援を要請されていました。
東京美術学校で松岡映丘のもとに学び、卒業後も新興大和絵会に在籍して有職故実の研究をよくした蓬春は、歌舞伎の世界では舞台の時代風俗や装束、調度などの監修を委嘱されたのです。中村歌右衛門(六世)とはそれらの仕事を通じて親しい交流があったことが、それぞれの遺品からも窺えます。
一方、昭和20年代後半より日本全国には多くの劇場が建てられました。大型劇場では舞台に緞帳が飾られるようになり、それらの原画は蓬春を始めとする当世一流の画家たちによって制作されました。
原画として残っている《白蓮木蓮》(新橋演舞場緞帳原画)、《杜》(国立教育会館緞帳原画)をはじめ、蓬春による現存するすべての下図をご覧いただき、劇場の華やかな雰囲気や舞台空間が生み出すドラマを感じていただければ幸いです。
山口蓬春《杜》
国立教育会館緞帳原画
昭和39年(1964)
独立行政法人教員研修センター蔵 |
山口蓬春《三越劇場「鏡獅子」弥生》素描
昭和33年(1958)
世田谷美術館蔵 |
山口蓬春《三越劇場「鏡獅子」後シテ》素描
昭和33年(1958)
世田谷美術館蔵 |
山口蓬春《白蓮木蓮》
新橋演舞場緞帳原画
昭和33年(1958)
山口蓬春記念館蔵 |
山口蓬春《都波喜》
昭和26年(1951)頃
山口蓬春記念館蔵 |
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