「油絵と日本画はそもそも絵の具がちがう。その絵の具を使って日本画は装飾性を発達させてきたし洋画は写実を追究してきた。(中略)日本画の顔料が持つ特殊性これを生かさないと-。」
(『富山新聞夕刊』昭和40年[1965]6月14日より)
山口蓬春(1893-1971)は、東京美術学校西洋画科に入学するも日本画科に転科し、以後、戦前から戦後へと時代が激しく移り変わるなかで「新日本画」の創造をめざし邁進し続けました。伝統的な技法を基盤としつつも広く内外の芸術を吸収し、「蓬春モダニズム」と形容される独自の世界を創り出していきます。そのなかで蓬春が「新日本画」の指針のひとつとして見出したのは「装飾性」でした。
一方で、画壇のなかで早くから頭角を現しながらも人間味に溢れた蓬春のもとには分野を超えて多彩な文化人が集まり、彼らからの要請により様々な美術活動をも展開していきます。本の装丁をはじめ、歌舞伎の美術監修や緞帳原画、着物、切手の図案などの制作では、内容に適したデザインを凝らし華やかな演出を施していきました。
それらのデザインにかかわる仕事と日本画制作とは、表現の場は異なりますが、ともに想像のなかから美を抽出し、目的に応じて発展させた行為ともいえ、それゆえにその芸術の共通するエッセンスを多分に含んだ表現であるとも考えられるのです。
本展では、蓬春のデザインにおける仕事に注目し、その視点を通じて蓬春の芸術を捉え直し、蓬春が目指した「新日本画」とその「装飾性」の意味を探ろうとするものです。
山口蓬春《榻上の花》
昭和24年(1949)
東京国立近代美術館蔵 |
山口蓬春《海辺華》
制作年不詳
株式会社ヤマタネ蔵 |
山口蓬春《浜》
昭和25年(1950)
個人蔵 |
山口蓬春《さざえ》
切手原画 昭和42年(1967)
日本郵政株式会社郵政資料館蔵 |
山口蓬春《あじさい》7月号 |
山口蓬春《蓮の花》8月号 |
山口蓬春《葡萄》9月号 |
|
山口蓬春《萩》10月号 |
山口蓬春《鳥》11月号 |
山口蓬春《みかん》12月号 |
|