山口蓬春記念館 令和5年度 夏季企画展
2023年6月10日(土)~9月24日(日)
明治維新後に西洋文化が流入、それまでの伝統文化が軽んじられたことに加え、廃仏毀釈による仏教寺院の廃頽や、美術品の海外流出などを背景に、明治20年(1886)、日本の伝統美術の振興を図るべく東京美術学校が設立開校されました。
山口蓬春(1893-1971)は大正4年(1915)、この東京美術学校西洋画科に入学。その後、指導教官のアドバイスから大正7年(1918)に日本画科へと転科し学ぶことになります。伝統を重んじる校風はその学習環境において顕著であり、蓬春が日本画科に進んだ大正中期においても東洋絵画の臨模(模写)が実技授業に積極的に取り入れられていました。
大正期から昭和初期にかけては、旧大名家や華族層が経済的苦境に陥り、伝世の名品を売却することが多くありました。蓬春は売立目録を手に、明治期に成立した最大規模の個人コレクション・井上馨旧蔵の伝雪舟《円窓草花》(室町時代)、そして酒井抱一の庇護者であった豪商・大澤家が旧蔵した尾形光琳《飛鴨図》(江戸時代)を求めています。戦後の経済・社会の混乱によって文化財の散逸や毀損、海外流出等が頻繁に起きていた中、蓬春が「黙っていたら今にも国外にもっていかれそうな気配なのでなんとか保護してやらなければ」と無理を承知で入手した作品が、伝・土佐光吉筆《十二ヶ月風俗図》(桃山時代、重要文化財)でした。
こうして日本の伝統文化を守り、その真価をみとめ、自らの画業にも活かしてきた蓬春ですが、著書『新日本画の技法』(*)において「近代の教育を受けた者はその藝術鑑賞の対象が世界的に広がり、殊に西欧の近代美術が取り上げられるようになった。」と述べ、新しい日本画の創造には西欧の美術にその精神を学ぶことの必要性も強調しています。蓬春は、戦前よりいち早くフランス現代作家の複製画を入手し、戦後はフランスの美術書籍やリトグラフを次々に購入しました。戦後間もない時期に開かれたピカソ、マティス、ブラックの展覧会に足を運び、西欧近代美術への審美眼を磨き、自らの感性を研ぎ澄ませてゆきました。
本展では美術家・山口蓬春が、古典美術と現代美術という一見相対する芸術を理知的に捉え、それらの真髄を新しい日本画の創造に昇華した経緯を、蓬春の日本画、古典の模写、蒐集した美術品ならびに良質な美術書籍を通じてご覧いただきます。蓬春の奥深い美への追求と審美眼を通じて、ゆたかな美術の世界をご覧ください。
*山口蓬春『新日本画の技法』美術出版社、昭和26年(1951)
本展の みどころ |
1. 蓬春が長く大切に保管していた学生時代の模写作品を展示します
伝統文化を重んじた東京美術学校では、日本画科の授業において古名画の模写を取り入れました。蓬春の学生時代の模写作品を通じて、美校での美術教育の一端を垣間見ます。2. 文化財専門委員も務めていた蓬春による古美術コレクションを展示
後年、文化財専門委員を委嘱され、わが国の文化財保護に尽力した蓬春。その彼が若き日より身銭を切って入手し、後世に伝え、守りたかった古美術の数々をご覧ください。3. 蓬春が蒐集した美術版画と蓬春の日本画を比較
明治時代に発行された高級美術雑誌、大正から昭和時代の木版色摺の美しい画集を展示。さらに蓬春が海外から取り寄せたフランス近代美術の版画と蓬春本画に見る濃密なマチエールを比較します。 |
一般 | 600円 | 高校生以下は無料 |
団体割引 | 100円割引 | 20名以上の団体で一週間前までに予約した場合 |
障がい者割引 | 100円割引 | 同伴者1名を含む |
連携館割引 | 100円割引 | ※連携館 葉山しおさい公園・博物館(大人券のみ) 神奈川県立近代美術館 葉山(企画展の一般券・学生券のみ) |
年間入館券 | 1,800円 | ※当館展覧会を何度でもご覧いただけるお得な年間入館券1,800円 (発行月から翌年の同月末日まで有効)を発売中) |
内 容 展展示の見どころを学芸員が解説します。
日 時 6月16日(金)、6月23日(金)、6月30日(金)、7月7日(金)、7月14日(金)、7月21日(金)
8月11日(金)、8月18日(金)、8月25日(金)、9月1日(金)、9/8(金)、9/15(金)、9/22(金)
10:30~(約30分)
定 員 先着5名程度
集 合 開始時間までに入館手続きをお済ませの上、受付前にご集合ください。
期 間 8月5日(土)~8月31日(木)
上記期間中、高校生以下のお子様連れのご家族は、入館料を一般料金より100円割引いたします。
※イベント等は中止になる場合があります。最新情報は当館ホームページ・SNSをご覧いただくか、
お電話にてお問合せください。